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改正電子帳簿保存法を活用して進むペーパーレス化!


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経理部門の職場には、総勘定元帳や請求書などの書類の束がたくさんしまってあるのではないでしょうか? そこにはコストと労力が費やされています。

帳簿書類のペーパーレス化を可能にする電子帳簿保存法が改正され使いやすくなりました。今回は、今後普及が予想される改正電子帳簿保存法についての実務上の影響をご紹介いたします。

 

 

1.電子帳簿保存法の概要

 

電子帳簿保存法とは国税関係帳簿及び国税関係書類の電子保存を一定の要件のもとに認めるものです。決算書類以外である契約書・領収書・請求書・見積書などの書類については、データ保存の他にスキャナ保存を認めています。書類のスキャナ保存については、従前では厳しい要件が定められていたため、実用的とは言えませんでしたが、平成27年度及び平成28年度改正により要件が大幅に緩和されました。

以下にそのポイントをまとめました。

 

 

2.最近の電子帳簿保存法改税のポイント

 

平成27年度改正

項目 内容
スキャナ保存の要件緩和

従前では契約書・領収書などの書類のスキャナ保存は3万円未満の場合にのみ認められていました。

改正により、金額基準を廃止し全ての契約書・領収書のスキャナ保存が可能となりましたので、区分けして保存する必要がなくなりました。また書類の大きさに関する情報の保存やカラーでの保存といった要件がありましたが、改正により不要とされました。

電子署名の廃止

従前ではスキャナ保存には入力者等の電子署名が必要とされていました。電子署名の仕様が厳格だったため準備に手間がかかるものでした。

改正により電子署名は不要となり、タイムスタンプを付すとともに、入力者等に関する情報を確認できることが要件とされました。

適正事務処理要件の追加 スキャナ読み取り前での改ざんなどの不正を防ぐために、相互けん制・定期検査・再発防止策について社内規定整備と運用を求める要件(適正事務処理要件)が追加されました。

 

平成28年度改正

項目 内容
デジタルカメラ・スマートフォンによる読み取り スキャナ機器について従前では固定型スキャナが必要でしたが、デジタルカメラやスマートフォンによる領収書等の読み取りが可能となりました。スキャナ機器の要件が緩和されましたのでハンディに読み取りが行えることになりました。
3日以内のタイムスタンプが必要に デジタルカメラ・スマートフォンによる読取の場合には書類の受領後に受領者が署名を行ったうえで、3日以内にタイムスタンプを付すことが要件とされました。
適正事務処理要件の緩和 適正事務処理要件の定期検査要件に関し、小規模事業者について緩和がなされ、税務代理人(税理士)による検査が可能となり、社内で最低3名が運用に必要だったものが1名でもよくなり企業の負担が減りました。

 

 

3.電子帳簿保存制度の承認申請

 

電子帳簿保存制度を利用するには、承認申請書を利用を開始する3ケ月前に提出し承認を受ける必要があります。

 

 

4.電子帳簿のメリットと将来の展望

 

電子帳簿によるペーパーレス化により、印刷する紙代・プリンタ関連の消耗品費及び書類の保管費といったコストの削減及び保管のための労力の削減が見込まれます。 

また紙からソフトデータへ保存の媒体を切り替えることにより、整理及び検索が容易になるとともに、保存したソフトデータへのアクセス権限を設定することによりセキュリティの強化がなされます。

さらなるペーパーレス化としては、請求業務のペーパーレス化及び電子稟議等が考えられ今後の普及が見込まれます。

このようにメリットの多いペーパーレス化に向けて電子帳簿保存制度の適用をご検討されては如何でしょうか。

(広報誌「こんぱす 2016年夏号」より抜粋)

 

執筆者:北

 

 

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