お役立ちコラム
新型コロナウイルス禍における休業手当の支給判断について
【質問】
今般、新型コロナウイルス禍の影響により、まん延防止等重点措置が実施され、また新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言も再検討されています。
今後、都知事からの当社施設の使用停止要請がなされ、業務ができなくなってしまった場合、当社は休業手当を支払う義務があるのでしょうか?
【結論】
個別事案ごとに(ケースバイケースで)、業務が実施できないことが「使用者の責に帰すべき事由」に該当するか否かを検討し、休業手当の支払いの要否を判断する必要があります。
今回のケースの場合、会社側は施設の使用停止要請がなされた後であっても、従業員側が別の形式で業務に就くことができないか、その可能性を最大限検討することが使用者には求められます。
【参考】
厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
【考え方】
労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
「使用者の責に帰すべき事由」とは、使用者の故意、過失または信義則上これと同視すべきものよりも広く(民法536条2 項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む)、いっぽうで不可抗力によるものは含まれないとされています(ノースウエスト航空事件 最高裁二小 昭62. 7.17判決)。
つまり「不可抗力による休業」と判断されれば休業手当は支払う必要はありません。
不可抗力による休業と言えるためには、
- その原因が事業の外部より発生した事故であること
- 事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること
という2点をいずれも満たす必要があります。
要件①に該当するものの例として、『新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)』内において、「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく対応が取られる中で、営業を自粛するよう協力依頼や要請などを受けた場合のように、事業の外部において発生した、事業運営を困難にする要因」と示されています。したがって、今回のケースは①の要件を満たすと考えられます。
要件②に該当するには、『同Q&A』内において、「使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要」があるとしています。そして、その具体的な努力の例として、「自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか」「労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか」といった事情を考慮することが述べられています。
②の判断を行うには、業種によるもの、会社規模によるもの、個々の従業員の能力によるもの、職場環境によるものでそれぞれ判断基準が異なってくるので、一律に回答はできず、慎重な検討が必要となってきます。
【現実的な対応として】
協力依頼や要請などを受けて営業を自粛し、労働者を休業させる場合であっても、労使がよく話し合って、休業中の手当の水準、休業日や休業時間の設定等について、労働者の不利益を回避する努力は重要です。
一方的な使用者側の判断は労働争議の火種になりかねません。労働者側へきちんと説明をしたうえで、双方が納得する形での休業実施が重要となります。
雇用調整助成金を活用するなどし、労働者が不利益とならないような対応を行いましょう。
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(執筆者:中西)
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