お役立ちコラム

2021年4月1日以降の高齢者雇用はどうなる?

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令和3年4月1日より、高年齢者就業確保措置を事業主の努力義務とする「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部改正」が施行されます。ざっくり要約すると『70歳までの就業機会の確保が事業主の努力義務』になります。

このように聞くと、定年を70歳まで引き上げなければならないのか、と不安になるかもしれませんが、必ずしもそのような対応が必要になるわけではありません。一方で今回の措置自体は努力義務ではあるものの、過去を振り返ってみると、高年齢者雇用安定法で努力義務とされてきた制度のほとんどは後に義務化されています。そのため、今回の措置も将来的な義務化を想定しておかなければなりません。

今回は、昨年のコラム『高年齢雇用安定法の改正で何が変わる?』を更に詳しく改正高年法の内容と共に、高齢者を雇用する際に会社側の行う手続き等について解説してまいります。

  1. 法改正の内容とは?
  2. 再雇用制度と定年引上げのメリットとデメリット
  3. 無期転換制度の特例とは?
  4. 60歳以降の社会保険手続き
  5. 高齢者雇用継続給付金とは?
  6. 高齢者雇用に関わる助成金とは?

 

1.法改正の内容とは?

(1)高年齢者就業確保措置の概要

まずは現行の『高年齢雇用確保措置』と、新設される『高年齢就業確保措置』について、その内容の違いを整理します。

上記の通り、措置内容①②③については対象年齢の違いはあるものの、その内容自体に大きな違いはないといって差し支えありません。そのため、高年齢者雇用確保措置(現行)の時点で高年齢就業確保措置(新設)と同等か、それ以上の措置をすでに実施している場合、今回、改めて高年齢就業確保措置を実施する必要はありません。既に定年年齢を70歳まで引き上げていたり、定年そのものを廃止していた場合がこれに当たります。

(2)高年齢者就業確保措置の詳細

◆対象者の基準

高年齢者就業確保措置は努力義務のため、定年の延長および廃止以外の措置については、対象者を限定する基準を設けることが可能です。ただし、対象者基準を設ける場合には、次の事項に留意する必要があります。

・対象者基準の内容は、原則として労使に委ねられるものですが、事業主と過半数労働組合等との間で十分に協議した上で、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいこと。
・労使間で十分に協議の上で設けられた基準であっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨や、他の労働関係法令・公序良俗に反するものは認められないこと。

◆70歳までの継続雇用制度

高年齢者雇用確保措置同様に、高年齢就業確保措置でも継続雇用制度を採用することが可能です。また65歳以降は、継続雇用することができる事業主の範囲が広がります。

・60歳以上65歳未満が対象:自社、特殊関係事業主
・65歳以上70歳未満が対象:自社、特殊関係事業主に加え、特殊関係事業主以外の他社

特殊関係事業主とは?

自社の①子法人等、②親法人等、③親法人等の子法人等、④関連法人等、⑤親法人等の関連法人等を指します。

(3)創業支援等措置について

「創業支援等措置」とは、70歳までの就業確保措置のうち、以下の「雇用によらない措置」を指します。

  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
  • (a)事業主が自ら実施する社会貢献事業
  • (b)事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

なお創業支援等措置を実施するには実施計画について過半数労働組合等の同意を得るなど、諸手続きが必要となります。

(4)措置を講じない場合の行政の対応

改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの安定した就業機会の確保のため必要があると認められるときは、高年齢者雇用安定法に基づき、ハローワーク等の指導・助言の対象となる場合があるとしています。そして、会社が指導および助言に従わない場合は、当該措置の実施に関する計画の作成を勧告することができます。

(5)すぐにでも準備を始めましょう!

現時点では努力義務とされていますが、将来的な義務化等も念頭に入れたうえで、今のうちから措置を講ずることを検討しておく必要があります。
人事戦略計画の見直しや就業規則等の改定、社会保険・雇用保険・労災保険・年金制度等の再確認が必要となります。

2.再雇用制度と定年引上げのメリットとデメリット

 現行の高年齢者雇用継続確保措置では再雇用制度か、定年の引上げ・廃止を実施する必要があります。それぞれのメリット・デメリットの例として以下の点が挙げられます。

 

再雇用制度

定年引上げ・廃止

メリット

・組織若返りの問題は生じにくい

・再雇用にあたり賃金を見直す場合、人件費はそれほどかさまない

・再雇用制度部分のみ検討すれば良いので比較的導入しやすい

・人材確保に有利

・雇用管理がしやすい

・モチベーションが高まる

デメリット

・モチベーションが低下する

・雇用区分が増えるため雇用管理が煩雑になる

・組織若返りが遅れる

・人件費がかさむ

・人事制度全体を見直す必要がある場合は、制度改定に手間がかかる

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「65歳超雇用推進マニュアル」より作成

 令和2年「高齢者の雇用状況」によると、継続雇用制度を導入している企業の割合は76.4%となっており、多くの企業で継続再雇用制度を導入しています。再雇用と共に賃金を引き下げる企業が多いかと思いますが、仕事内容が変わらないのに賃金が低下することは、少子高齢化の中、徐々に割合を増やしつつある高齢労働者のモチベーション低下に繋がり、また中小企業にも令和3年4月に適用される同一労働同一賃金に違反している可能性もあることから、高齢者雇用について今一度見直す時期にきていると言えるでしょう。

3.無期転換制度の特例とは?

 再雇用制度を導入する場合、再雇用社員は有期雇用となりますが、平成26年11月28日に公布、平成27年4月1日に施行された専門知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法により、定年後再雇用される有期雇用労働者については、一定の措置が講じられた場合には無期転換申込権発生までの期間に関する特例が適用されることになりました。

(1)定年後再雇用の高齢者の特例の内容

 原則として、同一の有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合に無期転換申込み権が発生しますが、以下の条件を満たした場合には、定年後引き続いて雇用される場合は無期転換申込権が発生しません。

  • 適切な雇用管理に関する計画を作成していること
  • 無期転換申込権行使前に事業主が都道府県労働局長に計画の認定を受けていること
  • 定年に達した後、引き続いて雇用されていること
  • 有期労働契約の締結・更新の際に、無期転換ルールに関する特例が適用されていることを明示していること

~特例適用の流れ~

厚生労働省「高度専門職・継続雇用の高齢者に関する無期転換ルールの特例について」より抜粋

(2)特例が適用される事業主の範囲

 本特例は同一の事業主が定年再雇用する場合のみならず、グループ会社等の特殊関係事業主で定年再雇用する場合にも適用されます。ただし、定年前に雇用していた元の事業主と特殊関係事業主との間で、継続雇用制度の対象となる高齢者を定年後に特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結する必要があります。

(3)認定が取り消された場合の取扱い

 特例は、認定された計画に関係する事業主及び労働者について適用されるため、認定が取り消されれば特例は適用されなくなります。認定取り消し後は通常の無期転換ルールが適用され、通算契約期間が5年を超えていれば、特例の対象となっていた労働者であっても無期転換申込権が発生することになります。

4.60歳以降の社会保険手続き

 社員の方が一定の年齢に達すると継続して雇用していても社会保険手続きが必要になるケースがあります。ここでは必要な社会保険手続きについて解説してまいります。

(1)同日得喪

 60歳以上で定年退職後に継続して再雇用する者については、退職後引き続き再雇用したときに使用関係が一旦中断したものとみなし、事業主は同日付で被保険者資格喪失届及び被保険者資格取得届を提出することができます。これにより、再雇用された月から再雇用後の給与に応じた標準報酬月額になります。
 なお、その際に添付書類として、「就業規則や退職辞令の写し等の退職したことがわかる書類及び継続して再雇用されたことがわかる雇用契約書」または「事業主の証明」が必要になります。

 

(2)70歳到達届

 

社員が在職中に70歳に到達し、70歳到達日以降も引き続き同一の事業所に使用される場合には、従来は70歳に到達する社員ごとに「厚生年金保険被保険者資格喪失届 70歳以上被用者該当届」(以下70歳到達届)という。)の提出が必要でしたが、平成31年4月より取扱いが以下のように変更となりました。

 次の(a)及び(b)の要件に該当する被保険者が、在職中に70歳に到達した場合は、日本年金機構において、厚生年金保険の資格喪失処理を行うため、70歳到達届の提出が不要となります。なお、両方の要件に該当しない場合は70歳到達届を70歳到達日から5日以内に、管轄の事務センターもしくは年金事務所へ提出する必要があります。

(a)70歳到達日以前から適用事業所に使用されており、70歳到達日の前日における標準報酬月額と同額である被保険者

(b)70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と同額である被保険者

※日本年金機構ホームページより抜粋

(3)健康保険資格喪失手続き

社員が75歳に達したとき、後期高齢者医療制度に移行し、個人単位で保険料を納付することとなるため、加入している健康保険の資格喪失手続きを行う必要があります。現在は資格喪失届と同一のフォーマットになっています。

5.高齢者雇用継続給付金

 再雇用に伴い賃金が減額される場合、要件を満たせば高年齢雇用継続給付を受給することができます。なお、高齢者雇用継続給付金は今後廃止する方向で検討されており、65 歳未満の継続雇用制度の経過措置が終了する令和7年度から新たに 60 歳となる高年齢労働者への同給付の給付率を半分程度に縮小し、その後段階的に廃止される見込みです。

高年齢雇用継続給付は、基本手当等を受給することなく雇用を継続する被保険者に対して支給される高年齢雇用継続基本給付金と基本手当等を受給中に再就職した被保険者に対して支給される高年齢再就職給付金があります。

(1)高年齢雇用継続給付の受給資格

 高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金それぞれの受給資格は以下の通りです。

【高年齢雇用継続基本給付金】

基本手当(再就職手当など基本手当を支給したとみなされる給付を含みます。以下同じ。)を受給していない方を対象とする給付金で、原則として60歳時点の賃金と比較して、60歳以後の賃金(みなし賃金を含む)が60歳時点の75%未満となっている方で、以下の2つの要件を満たした方が対象となります。

(a)60歳以上65歳未満の一般被保険者であること。
(b)被保険者であった期間(※)が5年以上あること。

【高年齢再就職給付金】

基本手当を受給し再就職した方を対象とする給付金で、基本手当を受給した後、60歳以後に再就職して、再就職後の各月に支払われる賃金が基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75%未満となった方で、以下の5つの要件を満たした方が対象となります。(a)60歳以上65歳未満の一般被保険者であること。

(b)基本手当についての算定基礎期間が5年以上あること。
(c)再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること。
(d)1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる安定した職業に就いたこと。
(e)同一の就職について、再就職手当の支給を受けていないこと。

(※)「被保険者であった期間」とは、雇用保険の被保険者として雇用されていた期間の全てを指します。なお、離職等による被保険者資格の喪失から新たな被保険者資格の取得までの間が1年以内であること及びその間に求職者給付及び就業促進手当を受給していない場合、過去の「被保険者であった期間」として通算されます。

(2)高年齢雇用継続給付の支給要件

 支給対象期間において、一般被保険者として雇用されている各月(暦月のことで、その月の初日から末日まで継続して被保険者であった月に限ります。)(これを「支給対象月」といいます。)において、次の要件を満たしている場合に支給の対象となります。

(a)支給対象月の初日から末日まで被保険者であること
(b)支給対象月中に支払われた賃金が、60 歳到達時等の賃金月額の75%未満に低下していること。
(c)支給対象月中に支払われた賃金額が、支給限度額(※令和2年8月1日現在365,114円)未満であること。
(d)申請後、算出された基本給付金の額が、最低限度額(※令和2年8月1日現在2,059円)を超えていること。
(e)支給対象月の全期間にわたって、育児休業給付または介護休業給付の支給対象となっていないこと。

賃金月額とは、原則として、60歳到達時点の直前の完全賃金月額6か月間に支払われた賃金の総額を180で除して算出された賃金日額の30日分の額となります。完全賃金月額とは、賃金締切日ごとに区分された1か月の間に賃金支払い基礎日数が11日以上ある月が対象となります。

なお、賃金月額には、上限額と下限額があります。この金額は毎月勤労統計の平均給与額により毎年8月1日に見直されます。

<平成2年8月1日現在>

上限額:479,100円
下限額:77,220円

 支給要件を満たしている場合、高年齢雇用継続基本給付金は60歳に到達した月から65歳に到達する月まで受給することができます。高年齢再就職給付金は再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が200日以上のときは、再就職日の翌日から2年を経過する日の属する月まで、100日以上200日未満のときは同様に1年受給することができます。ただし、社員が65歳に達した場合は、その期間にかかわらず、65歳に達した月までとなります。

(3)高年齢雇用継続給付の受給手続き

 高年齢継続給付は、事業主が以下の書類をハローワークに提出して申請します。

【初回の申請に必要な書類】

(a)雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
(b)高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書 
  ※個人番号欄にマイナンバー(個人番号)を記載ください。
(c)賃金台帳、労働者名簿、出勤簿又はタイムカード等被保険者が雇用されていることの事実、賃金の支払状況及び賃金の額を証明することのできる書類((a)(b)に記載した賃金の額及び賃金の支払い状況を証明することができる書類)
(d)被保険者の運転免許証(コピーも可)など被保険者の年齢が確認できる官公署から発行・発給された身分証明書などの書類 

【2回目以降の申請に必要な書類】

(a)高年齢雇用継続給付支給申請書(受給資格確認や前回の支給申請手続後にハローワークから交付されます。)
(b)賃金台帳、出勤簿又はタイムカード((a)の申請書に記載した支給対象月に支払われた賃金の額及び賃金の支払い状況等を確認できる書類)

(4)高年齢雇用継続給付における「各月に支払われた賃金額」とは?

 高年齢雇用継続給付における「各月に支払われた賃金額」とは、その月に「実際に支払われた賃金額」のことをいいますが、その賃金額の中に、減額がある場合は、その減額のあった賃金額を加算(これを「みなし賃金額(※)」といいます。)して、賃金の低下率を判断する場合があります。
高年齢雇用継続給付では、その支給決定を迅速に行うために、各月に支払われた賃金額を考えるにあたり、賃金の支払対象となった期間ではなく、「賃金の支払日」を基準としています。

(※)各月に支払われた賃金が低下した理由の中には、被保険者本人や事業主に責任がある場合や、他の社会保険により保障がなされるのが適切である場合など、雇用保険により給付がなされることが適切でない場合があります。

そこで、このような理由により賃金の減額があった場合には、その減額された額が支払われたものとして、賃金の低下率を判断することとなります。
これを、「みなし賃金額」といいます。

みなし賃金額が算定される理由は、以下のとおりです。

(a)被保険者の責めに帰すべき理由、本人の都合による欠勤(冠婚葬祭等の私事による欠勤も含みます。)
(b)疾病または負傷
(c)事業所の休業(休業の理由、休業の期間は問いません。)
(d)同盟罷業、怠業、事業所閉鎖等の争議行為
(e)妊娠、出産、育児
(f)介護

 このほかにも、6ヶ月通勤手当を前払いしている場合、会社として定めている支給対象期間ではなく、実際に支払われた金額以後の6の支給対象月に割り振って計上するなど、離職票等の手続きとはルールが違う点があります。申請誤りのないよう、高年齢雇用継続給付の申請書記載方法を事前に良く確認すると良いでしょう。

(例)6か月分の通勤手当80,000円が5月に一括して支払われた場合

  通勤手当80,000円を5月から9月の5か月に13,333円、10月に13,335円を分けて計上します。
(注)会社としては、4月から9月分の通勤手当であっても、通勤手当が実際に支払われた月以後に分けて計上することとなります(割り切れない場合は小数点以下を切り捨てし、残った金額を最後の月に計上)。

6.高齢者雇用に関わる助成金

高齢社員を雇用するにあたって活用できる助成金として、以下のものがあります。

(1)65歳超雇用推進助成金

65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して助成するものです。
3コース65歳超継続雇用促進コース、高年齢者評価制度等雇用管理改善コース、高年齢者無期雇用転換コース)で構成されています。

◆受給要件

(1)65歳超継続雇用促進コース
主な要件は以下のとおりです。ただし、1事業主1回限りの支給です。

(a)労働協約又は就業規則により、以下のいずれかに該当する制度を実施したこと。

・65歳以上への定年引上げ
・定年の定めの廃止
・希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度の導入

(b)(a)の制度を規定した際に経費を要したこと。
(c)(a)の制度を規定した労働協約又は就業規則を整備していること。
(d)支給申請日の前日において、高年齢者雇用推進員の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置を実施している事業主であること。
(e)(a)の制度の実施日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、高年齢者雇用安定法第8条又は第9条第1項の規定に違反していないこと。
(f)支給申請日の前日において、当該事業主に1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。期間の定めのない労働契約を締結する労働者又は定年後に継続雇用制度により引き続き雇用されている者に限る。)が1人以上いること。

(2)高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
 高年齢者の雇用管理制度の整備等に係る措置を労働協約又は就業規則に定め、次の(a)~(b)によって実施した場合に受給することができます。

(a)雇用管理整備計画の認定

  次の高年齢者のための雇用管理制度の整備等の取組に係る「雇用管理整備計画」を作成し、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長に提出してその認定を受けること。 高年齢者の雇用の機会を増大するための能力開発、能力評価、賃金体系、労働時間等の雇用管理制度の見直しもしくは導入または医師もしくは歯科医師による健康診断を実施するための制度の導入

(b)高年齢者雇用管理整備の措置の実施
(a)の雇用管理整備計画に基づき、同計画の実施期間内に高年齢者雇用管理整備の措置を実施すること。

(3)高年齢者無期雇用転換コース

次の(a)~(b)によって50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた場合に受給することができます。

(a)無期雇用転換計画の認定
「無期雇用転換計画」を作成し、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長に提出してその認定を受けること。
(b)無期雇用転換措置の実施
(a)の無期雇用転換計画に基づき、当該計画の実施期間内に、高年齢の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換すること。

このほかにも、雇用関係助成金共通の要件など、いくつかの受給要件がありま。

◆受給額

(1)65歳超継続雇用促進コース

労働協約又は就業規則により実施した措置の内容や定年等の年齢の引上げ幅、60歳以上の雇用保険被保険者数に応じて5万円~160万円が支給されます。詳しくは、以下URLをご参照下さい。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139692.html

(2)高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

(a)雇用管理整備計画の実施期間中、雇用管理制度の見直し等のために要した支給対象経費(人件費を除きます。)に60%(中小企業以外は45%)を乗じて得た額が支給されます。
(b)生産性要件を満たした事業主については、雇用管理整備計画の実施期間中、雇用管理制度の見直し等のために要した支給対象経費(人件費を除きます。)に75%(中小企業以外は60%)を乗じて得た額が支給されます。

なお、支給対象経費とは、雇用管理制度の導入または見直しに必要な専門家等に対する委託費やコンサルタントとの相談に要した経費のほか、同制度の整備等に係る措置の実施に伴い導入した機器、システムおよびソフトウェア等の経費です。ただし、50万円を上限とする経費の実費を支給対象経費とし、初回に限り50万円とみなされます。

(3)高年齢者無期雇用転換コース

(a)本コースの支給額は、無期雇用転換計画期間内に無期雇用労働者に転換された対象労働者1人につき48万円(中小企業以外は38万円)が支給されます。
 生産性要件を満たした事業主については、対象労働者1人につき60万円(中小企業以外は48万円)が支給されます。
(b)ただし、支給申請年度における対象労働者の合計人数は、転換日を基準として、1適用事業所あたり10人までとなります。

(2)特定求職者雇用開発金助成金(特定就職困難者コース)

高年齢者(60歳以上65歳未満)や障害者等の就職困難者をハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。

◆受給要件

次の要件のいずれも満たすことが必要です。

(a)ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
(b)雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること。
このほかにも、雇用関係助成金共通の要件などいくつかの支給要件がありますので、詳しくは厚生労働省HPをご確認ください。

◆受給額

対象労働者の類型と企業規模に応じて1人あたり下表のとおりです。

対象労働者

支給額

助成対象期間

支給対象期ごとの支給額

60歳以上65歳未満の短時間労働者以外

60万円

(50万円)

1年

(1年)

30万円×2期

(25万円×2期)

60歳以上65歳未満の短時間労働者

40万円

(30万円)

1年

(1年)

20万円×2期

(15万円×2期)

(注)( )内は中小企業事業主以外に対する支給額および助成対象期間です。

(3)特定求職者雇用開発金助成金(生涯現役コース)

 雇入れ日の満年齢が65歳以上の離職者をハローワーク等の紹介により、一年以上継続して雇用することが確実な労働者(雇用保険の高年齢被保険者)として雇い入れる事業主に対して助成されます。

◆受給要件

次の要件のいずれも満たすことが必要です。

(a)ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること。
(b)雇用保険の高年齢被保険者として雇い入れ、1年以上雇用することが確実であると認められること。
このほかにも、雇用関係助成金共通の要件などいくつかの支給要件がありますので、詳しくは厚生労働省HPをご確認ください。

◆受給額

対象労働者の類型と企業規模に応じて1人あたり下表とおりです。

対象労働者

支給額

助成対象期間

支給対象期ごとの支給額

短時間労働者以外

70万円

(60万円)

1年

(1年)

35万円×2期

(30万円×2期)

短時間労働者

50万円

(40万円)

1年

(1年)

25万円×2期

(20万円×2期)

(注)( )内は中小企業事業主以外に対する支給額および助成対象期間です。

(4)中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)

 これから起業を行う社員の方、事業を開始して間もない法人事業主、個人事業主の方が活用できる助成金です。(1)雇用創出措置助成分(中高年齢者( 40 歳以上)の方が、起業によって自らの就業機会の創出を図るとともに、 事業運営のために必要となる従業員(中高年齢者等)の雇入れを行う際に要した、 雇用創出措置(募集・採用や教育訓練の実施)にかかる費用の一部を助成するもの)と(2)生産性向上助成分(雇用創出措置助成分の助成金の支給を受けた後、一定期間経過後に生産性が向上している場合に、別途生産性向上にかかる助成金)の2つで構成されています。

◆受給要件

(1)雇用創出措置助成分

(a)起業基準日から起算して 11 か月以内に「生涯現役起業支援助成金 雇用創出措置に係る計画書」を提出し、都道府県労働局長 の認定を受けていること。
(b)事業継続性の確認として、以下の4事項のうち2つ以上に該当していること。

    a.起業者が国、地方公共団体、金融機関等が直接または第三者に委託して実施する創業に係るセミナー等の支援を受けていること。
    b.起業者自身が当該事業分野において通算10年以上の職務経験を有していること。
    c.起業にあたって金融機関の融資を受けていること。
      d.法人または個人事業主の総資産額が1,500万円以上あり、かつ総資産額から負債額を引いた残高の総資産額に占める割合が40%以上あること。

(c)計画期間 内( 12 か月以内)  に、対象労働者を一定数以上(※)新たに 雇い入れること。
  ※60歳以上の者を1名以上、40歳以上60歳未満の者を2名以上または40歳未満の者を3名以上(40歳以上の者1名と40歳未満2名でも可)
(d)支給申請書提出日において、計画期間内に雇い入れた対象労働者の過半数が離職していないこと。
(e)起業日から起算して支給申請日までの間における離職者の数が、計画期間内に雇い入れた対象労働者 の数を超えていないこと。  など

(2)生産性向上助成分

(a)支給申請書提出日において、「生涯現役起業支援助成金 雇用創出措置に係る計画書」における事業が継続していること。
(b)雇用創出措置助成分の支給申請日の翌日から生産性向上助成分の支給申請日までに、雇用する雇用保険被保険者を事業主都合で解雇していないこと。
(c)「生涯現役起業支援助成金 雇用創出措置に係る計画書」を提出した日の属する会計年度とその3年度経過後の会計年度の生産性を比較して、その伸び率が6%以上であること。  など

このほかにも、雇用関係助成金共通の受給要件などがあります。

◆受給額

(1)雇用創出措置助成分

起業時 の年齢区分に応じて、計画期間 内に生じた雇用創出措置に要した費用(※)の合計に、以下の助成率を乗じた額が支給されます。
 ※費用ごとに上限額がありますのでご留意ください。

起業時の年齢区分

助成率

助成額の上限

起業者が高年齢者(60歳以上)の場合

2/3

200万円

起業者が上記以外(40歳~59歳)の場合

1/2

150万円


(2)生産性向上助成分

「雇用創出措置助成分」により支給された助成額の1/4の額が別途支給されます。
  ※例:雇用創出措置助成分として100万円の助成金が支給されている場合には、その1/4の25万円が別途支給されます。

ご紹介した助成金はハローワークが実施している雇用関係助成金の一部です。
その他にも様々な助成金がありますので、興味がありましたら厚生労働省のHPをご確認下さい。また助成金は受給要件や支給額が年度途中でも変更になる事がありますので、申請される際には必ず最新情報をご確認下さい。


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参考文献:

厚生労働省「高年齢者雇用安定法改正の概要~70歳までの就業機会の確保のために事業主が講ずるべき措置(努力義務)等について~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1_00001.html

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「65歳超雇用推進マニュアル」
https://www.jeed.go.jp/elderly/data/manual.html

厚生労働省「令和2年高齢者の雇用状況集計結果」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15880.html

厚生労働省「第137回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会資料」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000187096_00013.html

日本年金機構「60歳以上の厚生年金の被保険者が退職し、継続して再雇用される場合、どのような手続きが必要ですか。」https://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/kounenseido/shokutakusaikoyo/20140911.html

日本年金機構「平成31年4月から被保険者の70歳到達時における資格喪失等の手続きが変更となります」

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2019/2019031501.html

日本年金機構「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158464.html

厚生労働省「65歳超雇用推進助成金」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139692.html

厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_konnan.html

厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/tokutei_kounenrei.html

厚生労働省「中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000115906.html

 

(執筆者:中谷)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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