お役立ちコラム

経理アウトソーシング(BPO) 5つの導入事例

経理アウトソーシング(BPO)の実際の導入事例を5つ紹介いたします。
自社の置かれている環境と似ているケースもあるかもしれませんので、経理アウトソーシングをご検討されている方は、是非導入適否の参考にしてみてください。



ケース1:複数の委託先はまとめるのが大変!


douyuu12.png


状況:子会社をつくったのはいいけれど...

A社は上場会社が100%出資する子会社として設立されました。

社員は親会社からの出向者のみの会社で、経理や総務的な業務はその子会社を所管する親会社の一部門の社員が担っています。会計伝票もその社員が起票していましたが、経理の専門的な知識があるわけでもありません。
一方で親会社は上場している会社なので、連結決算のために、専用のソフトへ入力したり、最新の会計制度にも対応していかなければなりません。
子会社のA社の場合、管理部門は軽視されがちで、専門ではない社員が、よくわからずに対応するというケースに陥りがちです。

このような状況からA社は管理機能を社外にアウトソーシングすることにいたしました。


課題:管理機能を複数のアウトソーサーへ委託したことで、より煩雑に

A社はアウトソーシング先として、給与計算=a社、社会保険手続き=b社労士法人、記帳代行=c社、税務申告=d税理士法人と、業務ごとに別々のアウトソーサーへ委託してしまいました。

結果として、それぞれアウトソーサー同士横の連携がないため、一つのことをそれぞれ個別に連絡しなければならなかったり、ミスや修正があった場合、一つの処理に複数のアウトソーサーが関与することで処理の重複や、やり直し等のコストがかさむ、といったことが多く発生してしまいました。

このような場合、その窓口となる社員の負担も相当なものとなりますし、連絡もれによるミスも発生しやすい状況となってしまい、「アウトソーシングしたのに、ちっとも楽にならない!」ということにもなりかねません。


対策:横連携ができるアウトソーサーへ切り替え

複数の委託先に関わる負担が大きいため、アウトソーサーをひとつにまとめられないか、アウトソーサーの再選定を行うことを決定しました。
再選定の結果、管理系の業務まるごと対応できるアウトソーサーe社にアウトソーシングすることに決定しました。


結果:ワンストップでスムーズな管理業務のアウトソーシングを実現

e社はグループ内で税理士法人、社労士法人を含み、必要な際にスムーズに横の連携が可能です。アウトソーサーを1社に集約することで、次のような効果がありました。

  • 1社に集約することで、同じ事項を何度も複数のアウトソーサーに連絡する手間がなくなった。
  • 会計処理を決算時になって新たに見直したり、修正したりすることがなくなった。
  • タイムリーな会計処理の確認が行われ、税務上の懸念事項など定期的に共有することができた。
  • 手戻りや重複による無駄が排除され、経営上の判断するための時間的余裕が生まれた。

ばらばらのアウトソーサーに委託した場合、それぞれに大きな問題はなかったとしても、その連絡に要する事務コストやストレス、重複して確認を行うことによるコストの二重化などが生じているケースがあります。その場合は、ワンストップですべての業務に対応できるアウトソーサーに切り替えることが有効な手段といえるでしょう。



ケース2:新興系上場会社は社員の入れ替わりが多い...


dounyu21.PNG


状況:新興系の上場会社は社員の入れ替わりが頻繁であるという現実

B社は最近、新興市場に上場した会社です。

設立して5年ですが、ここ数年急成長したことにより、経理は慢性的な人材不足です。
また、人材不足のため、社員に負荷がかかり、退職者が多く、十分な引き継ぎもなされていません。さらに、上場企業であるために監査対応や開示書類の作成など、対応すべき業務は多く、社員は疲弊しきっています。


課題:管理部門への負担が大きく、悪循環に陥っている

B社の課題としては以下の点が挙げられます

  • 管理部門は営業部門と異なり、忙しい割に給与への評価が低いため、人材の定着や採用が難航。
  • 会計や税務の改正に対応しきれず、監査法人の指摘を受けることで手戻りが発生。
  • 長年の付き合いで個人事務所の税理士を顧問としているが、開示のスピードに対応できていない。
  • 社内で行っている税務計算は、過去の退職者が表計算ソフトで作成したもので、今後の税制改正の対応方法がわからない。
  • 人材難に伴い、派遣社員で補っているが、社内にノウハウが蓄積されない。


対策:経理アウトソーシングを活用して、社内の人材も定着させる

上記の課題に対し、B社は「社内の人材を育成し、定着させたい」という観点から、次の3点をポイントとし、経理アウトソーシングを活用することとしました。

  1. アウトソーサーから専門的な知識や効率的な処理方法などのアドバイスを受けることで、社員を成長させ、社内にノウハウを蓄積する
  2. 経験を必要とする開示業務等については、専門的なアウトソーサーへ、最初はフルアウトソーシングから、その後徐々に社員を関わらせていくことで経験を積ませていく。
  3. 社内での税額計算はやめて、毎年改正のある税制に適切に対応可能な税理士へ変更する。


結果:社員の満足度向上につながる経理アウトソーシング

B社は、経理アウトソーシングに移行した結果、以下のような効果が生まれました。

  • 管理部門における慢性的な人員不足が解消された。
  • 処理上の疑問や効率方法など、アウトソーサーのアドバイスを受けることで、社員の知識の底上げができた。
  • 上司の立場からは、人材の採用選考や面接が省かれ、時間的余裕ができた。
  • 時間的余裕が生まれたことで、管理・指導面における改善や、経営的な側面から戦略を練る機会を持てるようになった。

このように、会社の成長に人員数や社員の成長がおいつけず、不安定な状態で業務を行っていくことは、会社にとって大きなリスクであるとともに、社員の流動化を招き、社内にいつまでもノウハウを蓄積することができない、という負のスパイラルに陥ってしまうことになります。

今回のケースでは、社員の定着と企業自体の成長を両立でき、会社と社員双方にとって望ましい形で経理アウトソーシングが導入された、非常に有意義な事例でした。



ケース3:繁忙期以外の過剰人員を解消するには?


dounyu31.PNG


状況:特定の期間に業務は集中する

C社の経理部は、近年退職者も出ず、安定した人員で経理業務を順調にこなしています。

一方で、経理部の業務は支払と入金、請求書発行や伝票起票が集中する月末から月初に繁忙期が集中しています。

以前は、繁忙期だけ派遣社員を頼んでいた時期もありましたが、必ずしも経理業務に長けた派遣社員が来るとも限らず、忙しい時期に教えながら仕事をこなす、というのがかえって社員の負担となっていたこともあり、正社員の採用に踏み切りました。


課題:繁忙期の処理量に合わせると、通常時期に人員過剰となる

上記の結果、繁忙期については過剰な負荷がかからないようになりましたが、繁忙期以外の期間は、人があまっている状態になってしまいました。
上層部からはコスト削減の要請に伴い、経理部は通常時期に合わせた人員を配備し、過剰人員は他部署へ異動、繁忙期の超過業務はアウトソーサーへ委託、という方針となりました。


対策:繁忙期の負担がかかる業務を抽出し、アウトソーサーへ委託

C社において、もっとも業務負荷のかかる月末から月初の業務を洗い出した結果、次のようなものが経理アウトソーシングの対象業務として挙げられました。

(a) 販売管理における請求書発行・封入・発送業務、入金消込業務
(b) 月末の経費未払計上
(c) 月末経費の支払データ作成
(d) 月末の支払伝票起票

このうち、(a)は会社にとって重要なコア業務であるため、それ以外の(b)~(d)のルーティンワークを社外のアウトソーサーへ委託することとしました。


結果:経理アウトソーシングにより、通常時期に合わせた人員配置が可能となり、更なる効果を生み出した

C社は、繁忙期の負担業務をアウトソースすることで、適切な人員配置を実現するに至りました。
それだけではなく、アウトソーサーからの提案により、
・ 複数のソフトウェアへ同じようなデータを投入していて、非効率である
という問題に対し、
・ 個別のソフトウェア間をつなぐ連携ツールを作成し、データ取込み、仕訳計上、残高照合などを簡易化する
という改善を行い、業務の重複をなくし、スリム化される結果となりました。

これにより、コストや人的工数も削減され、さらには人員適正化により社員側から新たな提案、改善などが生まれるような意識改革にもつながりました。

経理アウトソーシングにより、業務の平準化を図ったC社のケースですが、更なる効果を得ることができた例です。



ケース4:非効率な業務を改善する時間がない!


dounyu41.PNG


状況:まだまだアナログな経理の世界

D社は近年、急成長している会社です。

一方で、経理部内の業務をシステム化したいという要望は以前からあるものの、いっこうに進んでいません。

そのため、そのときそのときに必要なものを都度購入又は社内で作成してきた結果

  • 経費精算システムを利用しているが、会計ソフトへの計上は手入力
  • 売上の管理は社内で作成したデータベースを使用しており、使い勝手が悪く改修したいが、作成者がすでに退職しており、メンテナンスができない
  • 原価管理はエクセルで行っているが、会計の数字と合わず、照合に膨大な時間を費やしている
  • 共通経費を各部門へ配賦するため、別途表計算ソフトで管理している

といった状況です。


課題:業務の非効率を改善するためのシステム導入はコストが大きすぎる

非効率な業務状況から脱却するため、新しい基幹システムを導入し、複数の業務を1つのシステムで行える環境構築を目指しました。
ところが、ここに大きな壁が立ちはだかります。
システム業者による販売管理ソフトも含めた経理まわり全体のシステム化提案は、当初予算として想定した金額を大幅に上回り、ノンプロフィット(利益を生まない)部門である経理部としては、会社に対して説得が難しいのです。
業務改善はしたい、しかしシステム化は費用が掛かりすぎる、といった問題が解決しないうちに、さらに経理部門の社員一人が退職することとなりました。


対策:クラウドサービスと経理アウトソーシングをセットで

D社の課題を解決するためにアウトソーサーから提案された内容は、
「業務効率化のために、当社が提供するクラウドサービスを利用してはどうか」
というものでした。

もともとは退職社員が担っていた業務をアウトソーシングすることを検討していた際、クラウドサービスを提供し、経理業務も委託可能なアウトソーサーからの提案です。
クラウドサービスを利用することで、D社とアウトソーサーがデータを共有し、業務の効率化を図るという対応策です。


結果:クラウドサービスの活用で低コストの効率化を実現

D社は、退職社員の業務をアウトソーシングするとともに、アウトソーサーが提供している会計ソフトのクラウドサービスにより、以下のような業務改善がなされ、課題の多くが解決されました。

  • 経費精算ソフトから出力したデータを取り込み、自動で仕訳作成
  • 販売管理ソフトと会計ソフトの連携で、残高・滞留管理が簡易に
  • 口座連携により販売管理ソフトの消し込みが自動化
  • 原価計算やプロジェクト管理が会計ソフトで可能となり、個別の資料作成が不要に

D社が自社内にシステムを構築した場合は、ハードウェアやソフトウェアの管理維持に大きな負担がかかりますが、アウトソーサーのアドバイスの元、クラウドサービスを利用することにより、効率的な業務フローが構築でき、維持コストも抑えることが出来ました。

また、クラウドサービスを利用する副次的な効果として、リモートワークが可能となり、支部・支店や在宅勤務における利便性が向上し、効率化が一層進む可能性が生まれました。

今回のケースでは、経理アウトソーシング業務を担うアウトソーサーが、多くのサービスベンダーとパートナーシップを結び、多様なクラウドサービスを提供しつつ、経理業務のアウトソーシングとセットで課題を解決するというものでした。



ケース5:ただ一人の熟練社員のみで経理業務が完結している


dounyu51.PNG


状況:経理のことを知っているのはただ一人

E社の経理部は、小規模の会社ということもあり、創立当初からいる社員Pが一人ですべての経理業務をとりしきっています。
社長すらも経理業務については把握しておらず、経理のことはすべてPさんに聞けばよいと思っているので、特に問題は感じていません。
このような状況は小規模の会社に多く、それ自体は特に問題があるというわけでもありません。


課題:現状に不満はないが、将来が不安

E社のように、経理業務が一人の社員に属人化してしまった場合は、どのような不安材料があるのでしょうか。

  • Pさんもいつかは退職する。あるいは、もしものことがあった場合...
  • 業務がマニュアルに整備されていることが少なく、Pさんの頭の中にのみ業務の流れが把握されている。
  • お金を扱う経理業務を一人に社員に全権委任した際、不正が発生するリスクがある。
  • 会計や税務の改正は頻繁に行われるが、一人業務だと新しい情報についていけず、間違いに気づかない可能性がある。

E社としては、経理業務をマニュアル化および標準化すべく、社外のアウトソーサーにゆだね、その上一部の機能をアウトソーシングすることを検討いたしました。


対策:業務の可視化、新たな問題

業務のマニュアル化・標準化(可視化)をアウトソーサーに委託したまではよかったのですが、Pさんの協力が得られず、スケジュール通りに業務が進まないという事態になりました。

そうです。社長は十分に今回の趣旨をPさんに説明していませんでした。
Pさんの君越智を考えずにプロジェクトをスタートしてうまくいかなくなっていたのです。

Pさんとしては、自分の仕事をアウトソーサーに取られ、仕事がなくなってしまう不安から、ますます自分で仕事を抱え込むようになりました。

社長は改めてPさんに会社の意図していること、つまり、
・ マニュアル化を行い、Pさんの繁忙期の業務を軽減すべく、一部の業務をアウトソーシングする
・ Pさんにはルーティング業務から解放された時間を使い、銀行との折衝や経営計画資料の作成など、今まで取り組めていなかった業務にあたってほしい。
というように、Pさんの将来的なビジョンを描けるような説明をいたしました。


結果:アウトソーシングには事前に社員への説明が大きなカギ

その結果、Pさんのアウトソーサーへの円滑な協力も得られ、業務の可視化とともに非効率であった業務フローの改善もなされ、業務全体の標準化に成功しました。

E社のように、経理業務を少人数で担っている場合、担当社員はアウトソーシングに対して脅威を抱く場合もあります。また、経理業務がブラックボックス化している会社は多く、少人数であるがゆえに、不正経理や資金の不正流用というリスクも抱えています。

企業としては、不正を起こさせない体制を構築する責任もあり、アウトソーサーの活用で外部のチェック機能を働かせることは有効な手段です。

そのためにも、アウトソーシングを導入する際には、会社としての方針を事前に担当社員へきちんと説明して、同意のもとに進めていく必要があるでしょう。



まとめ


いかがでしたか?

今回は経理アウトソーシング(BPO)を中心に、導入事例を5つ紹介いたしました。

各社が抱えている業務上の課題は様々です。必ずしもアウトソーシングがすべて解決するわけではありませんが、専門家の意見を取り入れるためにも、一度相談してみるのもよいかもしれません。
自分の会社に当てはまりそうな事例がありましたら、是非参考にしてください。


以上

関連コラム

これを見れば全部わかる!経理アウトソーシングについてあらゆる疑問にお答えします
経理業務を効率化する方法のひとつにアウトソーシングがあります。今回は経理アウトソーシングにおける費用感やメリット・デメリットなど、様々な疑問にお答えしてまいります。経理業務のアウトソーシングを検討されている方は是非お読みください。 …
【必見】経費のコスト削減が可能になる6つのアイディア
【利益率向上・業務効率化】経費のコストを削減するメリット まず経費のコストを削減すると、会社の利益率が向上するメリットがあります。 売り上げをすぐに10%上げることは中々難しいことではないでしょうか。 しかし、経費を上手く削減できれば、売り…

当サイトの情報はそのすべてにおいてその正確性を保証するものではありません。当サイトのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、賠償責任を負いません。具体的な会計・税務判断をされる場合には、必ず公認会計士、税理士または税務署その他の専門家にご確認の上、行ってください。