お役立ちコラム

産休・育休取得者 紛争解決事例集

 

昨今、育児介護休業法の法改正等、産休・育休を取得したい方に対して法整備が整い、昔に比べ、産休・育休が取得しやすくなりました。しかしながら、まだ、産休・育休にかかる労使トラブルがなくなったわけではなく、厚生労働省の紛争解決事例件数でも、上位を占めるのが、このテーマとなります。

そこで今回は、厚生労働省管轄である東京労働局雇用均等室が発表している紛争解決事例集を紹介します。

事業主の皆様、そして従業員の皆様がより幸せに、働きやすい環境で共存できるよう、考えて頂く一助になればと思います。

 

<問題対応ケース1>

妊娠を理由に解雇した場合

(労働局の解説)

1.男女雇用機会均等法第 13 条では、「妊娠中の女性労働者が医師等からの指導を受けた 場合、その指導を守ることができるようにするために、事業主は、休業、勤務時間の変更等の措置(=母性健康管理措置)を講じなければならない」と定めています。同法は全ての女性労働者が対象となりますので、パート・アルバイトの場合でも事業主は措置を講じる義務があります。

 

2.男女雇用機会均等法第 9 条第 3 項では、妊娠等を理由とする不利益取扱いを禁止しています。「妊娠中の女性労働者が母性健康管理措置により休業したことを理由に解雇や退職強要をすること」は禁止となります。

 

3.母性健康管理措置を講じるにあたっては、就業規則上の既存の休暇制度等を適用することも可能ですが、適用の結果、男女雇用機会均等法第 9 条第 3 項で禁止している不利益取扱いが生じることのないよう十分留意する必要があります。

 

 

<問題対応ケース2>

妊娠を理由に正社員からパートに変更した場合

 

(労働局の解説)

1.労働基準法第 66 条第 3 項では、「使用者は妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない」と規定しています。

 

2.また、男女雇用機会均等法第 9条第 3項では、事業主は、「妊娠した女性労働者が深夜 業の制限を請求したこと」を理由に「パートタイム労働者への労働契約の変更を強要する等の不利益取扱い」をしてはならないと規定しています。

 

3.妊娠中の女性労働者が利用可能な制度は、関係法令にあります。事業主は、これらの制度の利用を認めるのみでなく、制度利用を理由とする不利益取扱いをしないよう留意する必要があります。

 

 

<問題対応ケース3>

「出産後また戻ってきて」と言って、一旦退職させた場合

 

(労働局の解説)

1.男女雇用機会均等法では、「労働基準法第 65 条第 3 項に基づき妊産婦が軽易な業務への転換を求めたことを理由とする不利益取扱い」についても禁止しています。

 

2.母体に負担の大きい業務で、他に転換すべき業務がどうしても無い場合は、産前休業に入るまで無給の休業となる場合もありえますが、解雇や退職強要をすることは禁止です。

 

3.産休・育休による労働者のメリットは大きく、いったん退職となるか雇用が継続するかは労働者にとって大問題です。雇用契約を継続した上で、産休→育休→復職と男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法に沿った対応をして下さい。

 

 

<問題対応ケース4>

期間雇用者だから産休・育休を取得させなかった場合

 

(労働局の解説)

1.平成 17 年 4月 1日から、期間の定めのある労働者(以下、「期間雇用者」)も育児休業を取得できることとなりました。育児休業を取得することのできる期間雇用者の範囲は関係法令にあります。

 

2.期間雇用者の育休取得要件の1つである「子の1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれる」か否かについては、育児休業申出時点で明らかになっている事情に基づき判断します。すなわち、現在の雇用契約書において契約更新の有無についてどのように明示しているか、産休や育休を取得しなければ契約は更新されていたか等により判断するものです。経営状況等により育休取得後に復職できる可能性が100%では無い場合でも、雇用継続の「見込み」があれば育児休業取得対象者となります。

 

3.産休取得を理由とする雇止めは男女雇用機会均等法で、育休取得を理由とする雇止めは育児・介護休業法で禁止されています。育休を取得することができる期間雇用者が産 休及び育休取得を希望している場合は、両休業により労務の提供が得られない期間についても雇用契約を更新する必要があります。

 

 

<問題対応ケース5>

派遣労働者だから産休・育休取得を認めなかった場合

 

(労働局の解説)

1.労働基準法第 65 条に基づく産休は、全ての労働者が対象となりますので、派遣労働者も産休を取得することができます。

 

2.平成 17 年 4月 1日から期間雇用者も育休対象となっており、育児・介護休業法第 5条 で定める要件を満たす場合は育休が取得できます。派遣労働者についても、他の期間雇 用者と同様、同法第 5条の要件を満たす場合、育休を取得することができます。

 

3.法令上の要件を満たし産休・育休を取得する派遣労働者について、事業所閉鎖により 全員が雇止めになる、契約更新の上限が決まっているなどの合理的な理由なく雇用契約 を更新しないことは、男女雇用機会均等法第 9条第 3項及び育児・介護休業法第 10 条に定める不利益取扱いに該当します。すなわち、産休・育休により労務提供が無い期間についても、雇用契約を更新する必要があります。

 

 

<問題対応ケース6>

妊娠だけを理由に、営業部で一定の成績を上げている人を本人が希望しない部署に異動させた場合

 

(労働局の解説)

1.妊娠・出産等を理由とする不利益な配置転換は男女雇用機会均等法第 9 条第 3 項違反です。

 

2.同条は妊娠している女性労働者に対する配置転換を一律に禁止するものではありませんが、通常の人事異動ルールからは十分に説明できず合理的な理由が無いもの、労働者に相当程度の経済的又は精神的な不利益を生じさせるものについては法違反となる可能性があることに留意が必要です。

 

3.事業主の真意が妊娠した女性に対する退職強要をした場合、 女性は妊娠したら退職させる方針があるのではないかという法律上の問題もあります。 

 

 

<問題対応ケース7>

育休後は本人の希望の有無にかかわらず、通常時間勤務を強要した場合

 

(労働局の解説)

1.育児・介護休業法第 23 条では、「事業主は 3 歳に満たない子を養育する労働者につい て、労働者が希望すれば利用できる、所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための措置(短時間勤務制度)を講じなければならない」と定めています。同条は、期間雇用者の場合でも事業主は措置を講じる義務があります。

 

2.育児・介護休業法第 23 条の 2では、短時間勤務の申出を理由とする不利益取扱いを禁止しています。

 

 

関連ページ:

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人事・労務・社会保険サービス|サービス紹介

 

執筆者:染野

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