お役立ちコラム
CSA社労士雑記 ~特定社会保険労務士についてのお話(2)~
では、実際にどのようにあっせんが行われるのか、
その流れを見ていきましょう
※労働局を利用する場合です。
まず、労働基準監督署や、最寄の労働相談コーナーで、どのようなトラブルであるか、相談をします。
相談をしている中で、“あっせんで解決を目指してみよう”となった場合、
“あっせん申請書”という書類を書いて提出。
※準備していって、提出もありです。
たとえば、毎朝、始業前にトイレ掃除をさせられているが、その分の賃金の
支払いがない。
毎日30分掃除を行い、2年分であるので、
時給換算額 × 〇〇〇時間分として、100万円の支払いを求める。
など。
※正当な権利であると考えられることはすべて記載したほうが良いです。
遅延損害金や、慰謝料を求めたりすることも可能ですから、
できるだけ専門家を利用して、あっせん申請を行うことをお勧めします。
しばらくすると、紛争調整委員会から、あっせんの実施日が紛争当事者に通知されます。
通知書には、あっせんを起こした側(労働者側)の要求等が記載されており、その内容を受けて、
あっせんを起こされた側(会社)が受諾すればいよいよ開始。
会社側は、あまり見慣れない通知が、紛争調整委員会という、
見たこともないような機関から送られてきますから、一瞬扱いに困りますね。
もっぱら、代理となれる弁護士の先生や、私たち特定社会保険労務士に相談をすることになるのでしょうか。
会社側では、紛争に要する時間や労力をできる限りゼロにしたい、ということもあり、
訴訟になるよりは、話し合いの解決を求めたいはず。
ですから、あっせんが成立する見込みは、かなり高いものであると思います。
あっせんが行われる日、労働局にいくと、通常「3つの部屋」が用意されています。
一つは会社側の部屋、もう一つは労働者側の部屋、最後の一つは、
権利を主張、またはその主張に対して抗弁をする部屋。
あっせんの特徴は、当事者同士が会わないということ。
つまり、双方の主張を、あっせん委員が真ん中の部屋で聞き、
会社側と労働者側は、主張のために入れ替わり
部屋を行ったり来たりします。
たとえば以下のような感じ。
++++++++++
抗弁の部屋にて
<労働者側入室>
あっせん委員:
事の詳細と求める権利の内容を話してください。
労働者:
毎朝、始業前に行っている掃除の分の賃金の支払いをお願いしたい。
会社に何回か話をしてきているが、納得をしてくれなくて困っている。
毎日、会社に来ている時間を手帳に記録しているが、そこから計算をしてみると、
1日30分、2年間で、少なくとも100万円程度になることは間違いないとおもう。
あっせん委員:
わかりました。ではいったん自室に戻っていてください。
<会社側入室>
あっせん委員:
労働者側が100万円を要求してきているが、会社側の主張はどのようなものでしょうか。
会社:
本人とは何度もはなしましたが、朝の掃除は強制をしていません。
社員がより会社を良くしていこうと考えてくれて、自主的に立ち上げた活動です。
なので、本来支払いをする必要はないものであると思います。
しかし一方で、実際に朝早く会社に来ていて掃除をしている事実がある以上、支払はやむを得ない、とも考えています。
ただし、100万円という金額はありえない。
セキュリティカードの打刻記録を見て計算をしたところ、多くても50万円程度であるとおもわれます。だから、50万円でなんとか折り合いをつけたい。
あっせん委員:
わかりました。
それでは、いったん自室に戻っていてください。
~あっせん委員 検討の後~
<労働者側入室>
あっせん委員:
会社側は、朝の掃除については、指揮命令があったわけではなく、そのため時間外労働があったものとは考えていないが、実際に掃除をしていた事実を考慮し、支払いをしてもよいと言っております。
当方でも資料等を確認し検討いたしましたが、60万円が適正であると思います。
労働者:
60万円か・・・・・。
わかりました。妥当な線だと思います。
60万円であれば和解に応じます。
<労働者退出>
<会社側入出>
あっせん委員:
労働者にあっせん案を提示しました。60万円であれば、納得できるといっています。
60万円で解決とする考えはありますか?
会社:
60万円とは、ひどい話ですね。
しかし、これ以上はお互いにとってメリットが無い。
60万円で和解します。
++++++++++
最後に、あっせん案をあっせん委員が提示し、双方合意の上、印をついて決着。
相当、荒いイメージですが、このような感じでしょう。
制度を利用しないことが一番ですが、
何かあった時のために、知っておいても損はないとおもいます。
せっかくなので、こんな仕組みがあったなあと、頭の片隅にとどめておいてもらえると幸いです。
ちなみに、当該制度では、労働者同士の争いでは利用できません。
また、募集採用に関するもの、女性であることに対する差別的扱いのもの、正社員とパートタイム労働者の差別的扱い、育児介護休業等は、雇用機会均等法による調停による解決となりますから、こちらも利用不可となります。
できれば、ここまで頭の片隅に入れておくとよいでしょう。
関連ページ:
CSA社労士雑記 ~特定社会保険労務士についてのお話(1)~
執筆者:立山
(c)123RF
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