お役立ちコラム
兼業・副業と社会保険手続き
目次
Q1.兼業・副業に興味があるのですが、私も兼業・副業出来るのでしょうか?
Q2.兼業・副業で2カ所以上の会社で勤務する場合、2ヶ所以上で健康保険の加入手続きを行うのですか?
Q3.そもそも、社会保険の加入条件は何でしょうか?
Q4.そもそも、社会保険料のどの様に決まり、給与から天引きされるのですか?
Q5.「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を提出するに当たっての留意点は?
Q6.勤務している1カ所の法人で昇給がありました。何か届出は必要ですか?
Q1.
兼業・副業に興味があるのですが、私も兼業・副業出来るのでしょうか?
少子高齢化が深刻な我が国日本に於いて、現在国を挙げて推奨されている「働き方改革」の一貫に「兼業・副業の促進」に関する項目もあり、兼業・副業に関する関心が高まっております。
厚生労働省の最新モデル就業規則にも「兼業・副業」の章が新たに設定されており、国としても推奨を促がしている状況です。
基本的に、会社は就労時間外の従業員の行動について必要以上の規制をかけることは出来ません。しかし、会社も社員の労働時間や健康状態の管理等を行わなければならず、兼業・副業に関しては労使間で話し合い、良好なコミュニケーションを築いた上で進めることを必要です。
よって、まずは自身の会社の就業規則で兼業・副業が可能であるかどうかを確認しましょう。
Q2.
兼業・副業で2カ所以上の会社で勤務する場合、2ヶ所以上で健康保険の加入手続きを行うのですか?
2か所以上(複数)の適用事業所に使用されることにより、管轄する年金事務所または保険者が複数となる場合は、「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を届出し、メインとなる事業所を「選択事業所」とする手続きを行います。この届出は被保険者本人が行う必要あります。また、健康保険証が複数枚作成される訳ではありません。
Q3.
そもそも、社会保険の加入条件は何でしょうか?
厚生年金保険の適用事業所(株式会社等の法人等)に勤務する正社員・法人の代表者、役員等は被保険者になります。
また、パートタイマー・アルバイト等でも、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である方は、被保険者となります。
(正社員の4分の3未満であっても、①週の所定労働時間が20時間以上、②勤務期間が1年以上見込まれること、③月額賃金が8.8万円以上、④学生以外、⑤従業員501人以上の企業に勤務していることの5つの要件を全て満たす方は、被保険者になります。)
健康保険は75歳まで加入(75歳以上は後期高齢者医療へ移行します)、厚生年金保険は70歳までの加入となります。
Q4.
そもそも、社会保険料のどの様に決まり、給与から天引きされるのですか?
健康保険では、給与を一定の幅で区分した「標準報酬・保険料月額表」で保険料を算出します。
標準報酬は、被保険者が労働の対償として受けるすべてのものが対象となります。通勤費等も含み、また、定期券などの現物給付も金額に換算し標準報酬にカウントします。
1年に一度、4.5.6月の給与で標準報酬月額を決定する「算定基礎届」にて標準報酬月額を決める、また、昇給等、固定的賃金の変動があった際、対象に該当すれば「月額変更届」にて確定した標準報酬月額にて保険料が算出され、給与から天引き(控除)される仕組みです。
Q5.
「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を提出するに当たっての留意点は?
まず、上記でも記載した通り、被保険者が2か所以上の適用事業所に使用される場合、被保険者が「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」の届出を行い、年金事務所または保険者のいずれかを選択する必要があります。届出をすると、選択した事業所を管轄する年金事務所(または健康保険組合)がその被保険者(二以上事業所勤務者)に関する事務を行うことになります。健康保険組合を選択したとしても、厚生年金保険の事務は年金事務所が行います。その後の各種届出の留意点は下記のとおりです。
(1)届書により、二以上該当者単独で提出する必要があります。電子申請はできません。
非選択事業所に関する書類であっても、選択事業所の管轄に提出します。
(2)各届書(資格取得届、喪失届、月額変更届、賞与支払届、算定基礎届など)の余白には、赤字で「二以上勤務者」と記入し提出します。
(3)保険料につき事業所で既に口座振替をしていたとしても、二以上勤務者に関する口座振替依頼書が別途必要となります。
(※なお、上記は健康保険組合によっては異なる扱いの場合もありますので、手続前にはご確認をお願いいたします。)
Q6.
勤務している1カ所の法人で昇給がありました。何か届出は必要ですか?
二以上事業所勤務者については、それぞれの事業所から受ける報酬ごとに、月額変更届(随時改定)の要件を満たすかどうかを判断します。
例えば、選択事業所(A事業所)と非選択事業所(B事業所)に勤務している二以上勤務者について、A事業所の固定的賃金に変動があり、A事業所の報酬月額に基づく標準報酬月額で二等級以上の差が生じた場合は、月額変更届を提出することになります。
そのうえで、月額変更届に基づくA事業所の報酬月額と既に算定されているB事業所の報酬月額の合算額を、その者の改定後の報酬月額として随時改定を行います。
A事業所の報酬に固定的賃金変動があり、A事業所から受ける報酬だけでは標準報酬月額等級に二等級以上の差が生じなかったが、B事業所から受ける報酬(固定的賃金の変動はない)と合算すると二等級以上の差が生じる場合は、随時改定を行いません。
二以上勤務者の随時改定は、合算後の報酬額ではなく、それぞれの事業所から受ける報酬ごとに、随時改定の要件を満たすかどうかで判断するところがポイントになります。
執筆者:渡辺
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